撮影結果に直結する安定性

KIRK Enterprise Solutions(KES)により、マクロ撮影のために設計されたショートレールプレートです。クランプとレール部分のリニューアルによりさらに使いやすくなりました。

マクロ撮影では大まかに構図を決めてから「もうちょっと引きたい」もしくは「もうちょっと寄りたい」という場面が多いものです。また最短撮影距離付近での撮影でもカメラを前後させて位置を微調整する必要に迫られることも多いでしょう。そのような場合でも三脚を動かすことなくクランプ側で微調整ができるというのもクイックリリースクランプの利点のひとつです。LRP-1N2より約5cm短い設計で、G1ジンバル雲台などに装着してカメラボディを保持したりノーダルポイントの調整用としても使いやすいレールです。

本物だけが持つ信頼性

6061-T6アルミ合金の塊(インゴット)からCNC(コンピュータ制御)加工により高精度で削り出されたクランプは万力のようにがっちりとプレートを挟み込み、ズレやガタとは無縁です。開閉ノブをわずかに緩めるだけでプレートのスライドが可能となるのは従来通りですが、ノブの駆動に特殊なネジを使用することにより半回転させるだけでクランプが完全に開きます。まさにワンアクションで機材交換や縦構図への変更が可能となりました。ノブ式はロック/アンロックの手ごたえがわかりやすく、スライド時にはプレートのセーフティスクリューが機能しますので、不注意による脱落事故の確率も低くなります。

クランプの向きは六角レンチでネジを緩めることにより90度ずつ回転させることができ、カメラボディでも三脚座でも固定することができます。この六角レンチを収納できることもポイントです。クランプ裏面には正方形の突起が設けられ、レール部の同形の凹みと噛み合っていますのでクランプだけが回転してしまう恐れもありません。三脚座使用の場合は縦方向に固定したり、左右のスライダーとして使うなど、撮影スタイルによって使い方が広がります。

もちろん同素材のレール部分も耐久性・強度・精度などを突き詰めた設計です。Al-Mg-Si系の6000番台はアルミ合金の中でも耐食性が高く、T6熱処理をして強度を高めた母材は非常に軽量なうえ強度は2017ジュラルミンに匹敵し、競技用自転車や自動車・船舶・航空機など各種の部品から鉄塔やクレーンまで、腐食に強く軽量でかつ強度を必要とされる部分で用いられるハイグレードな金属です。加えて表面は黒い塗装ではなく硬質ブラックアルマイト仕上げで、硬度の高い皮膜で全体を覆うことにより着脱を繰り返しても傷がつくことはほとんどありません。これは傷がついたら見栄えが悪くなるという話ではなく、クランプで固定する際に傷が潰れただけでしっかりと締まっていなかったという失敗を回避するために必要な機能の話です。また固定ネジ類は錆の発生による強度低下の心配が少ないステンレス製となっています。

アルカスタイルのクイックリリースシステムではこの使用素材・切削精度・表面処理の3つが非常に重要な要素となり、どれが欠けても安定性、耐久性、安全性などに必ず問題が出てきます。なかには「航空機用アルミ使用」などと非常に曖昧な表示のメーカーもありますが、当然のことながら航空機でも強度の必要のない部分には普通のアルミも使用されていますので、キチンと素材名が明示されていなければ全く意味がありません。アルカスタイルの広がりにより巣が入った鋳造アルミを塗装しただけというプレートも実際に流通しています。新品の見た目ではなかなか判断できない部分ですが、全ての面で間違いなく優れているからこそ当店ではKIRK製品を自信を持ってオススメしています。

新たに広がる価値

本来はマクロ撮影用のロングレールですが、標準レンズを装着したカメラのボディ側を三脚に乗せる場合、前後バランスを取るプレートとしても使うことができます。クランプにもレール部にも位置決めの目安となる目盛りが精密にレーザー刻印され、水準器も装備しています。

品番末尾がN2となったモデルからは底面にMAGPUL社のQD(Quick Disconnect)システムに対応するQDソケットが設けられ、ワンタッチでMAGPUL製スリング等の着脱が可能です。もちろんKIRKの設計に妥協はなく、アルミ合金をただ切削しただけでは金属同士の耐摩耗性に劣るためステンレス製の別パーツを圧入するという徹底ぶりです。もとは自動小銃などを肩から吊り下げ、同時に保持しながら射撃するためのミルスペックのスリングシステムですので信頼性は抜群です。QDシステムにつきましてはこちらのページで詳しくご案内しています。

確実な安全性

レール底面の前後両端にはセーフティスクリュー(Ver.2)を取り付けられるようになっています。

クイックリリースクランプのノブを僅かに緩めるとレール全体を前後にスライドさせてカメラの位置を移動させることができますが、仰角や俯角を大きく取る撮影時には安全性の確保も重要です。セーフティースクリューを取り付けておけばスライドの限界でクランプに当たり、物理的に脱落してしまうことはありません。もちろん必要がなければ取り付けをせず、スライドさせて機材を着脱することも可能です。

機材の落下による損傷を絶対に避けなければならないプロカメラマンのために、安全に関わる部分にはあえて可動式などのギミックを採用せず、ネジを装着するというアナログな手法により確実性を重視しています。