HUSKY・KES(KIRK Enterprise Solutions)・Markins・Arca-Swiss・Wimberley正規プロショップ スタジオJin 

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HUSKYを受け継ぐ-1

オーバーホールのススメ

2022年5月、60年近くにわたってHUSKY三脚を育ててきたトヨ商事株式会社から、当社がその製造および販売に関する一切の業務を引き継ぐこととなりました。スタジオJinとしてHUSKYの販売を始めてたったの12年ほど、おそらく一番若い部類の販売店だったと思います。そんな販売店が各部品の手配、組立工場の統括から各販売店やお客様への直販、修理、オーバーホールまで全て引き受けるとなると目まぐるしい日々が続き、あっという間に1年あまりが過ぎてしまいました。

引き継ぐからにはHUSKYのクオリティを一切変更せず完全な形で継承したいという思いで、既に完成の域にある製品の品質はもちろんのこと、販売体制の維持、そして以前と変わらないアフターサービスと、なんとか軌道に乗ってきたような感じです。まだまだ不慣れな部分がありいろいろな方面にご迷惑を掛けてばかりですが、ようやく今後も続けていけるという目途が立ったように思います。

今回は改めてHUSKYの歴史を大きく3期に分けて振り返りながら、一番お問い合わせの多い各モデルのオーバーホールについての情報をまとめてみたいと思います。年式によって仕様がはっきり分かれているわけではなく、細かなマイナーチェンジは多岐にわたりますので明確な線引きはできませんが、目安としていただければと思います。

60年物のビンテージモデルも(1983年モデルまで)

以前の特集でも書きましたが、昭和38年、当時のアメリカ大使館にてアメリカ商務省主催の米国製品展示会が開催され、その際に米クイックセット社とトヨ商事との間で代理店契約を交わしたところからHUSKYの日本での歴史が始まります。西暦でいうと1963年ですので今年でちょうど正式デビューから60周年となります

当時のHUSKYと現行モデルの機能的な一番の違いは、脚パイプの付け根に脚部強化リングが装着されておらず、パイプがそのまま三脚ボディにボルト止めされているという部分です。脚部開閉のたびに三脚ボディと薄い脚パイプが線接触で擦れるので、使用しているうちに脚パイプ側が摩耗してクラックが入り、最終的にはボルト穴が千切れるように割れてしまうという弱点があります。割れてしまった金属を元に戻すことはできないので、クラックが見つかった時点でパイプ交換となってしまいます。もちろんパイプが削れるということは三脚ボディとの間に空間ができることになりますので、三脚全体が揺れやすくなります。こうなると撮影どころではなくなります。

またこの年式は三脚ボディとEVガイドパイプに樹脂製のEVリングが最初から装着されておらず、エレベーターを上げた状態でロックナットを緩めるとEVポストが勢いよく落下してしまいます。ガタが出やすい場所なのでオーバーホール時には上部に幅の広いEVリングを製作して厚みも調整するのですが、構造的に下部には入れられないので完全に解消するのは難しい年式です。

生産から40年以上が経過しているアルミ合金はどうしても脆くなってしまい、完全分解すると内部にクラックが見つかることもあります。特に雲台ボディとトッププレートのピボットがプラスネジで固定されているモデルは縦軸(上下動作軸)にスプリングでテンションを掛けることができない構造なので、現行モデルと比較すると使いにくく感じる方も多いようです。またパン棒が曲がっていたり、樹脂製のEVロックノブやパンロックノブが破損していたりと、部品代がかさんでしまうケースも多くあります。もちろんオーバーホールをすれば当時の新品性能には近づけることはできるのですが、それでもやはり現行モデルの性能には及ばない部分があることも事実です。修理総額と新品価格を見比べると、そろそろ天寿を全うさせてあげた方が良いという判断になってしまう場合もあります。

アメリカ製造時代の後期(1983~2008年モデル)

83年以降のモデルは脚パイプの付け根に脚部強化リングが装着され、三脚ボディのパイプ取付部分も拡幅されました。この改良により脚パイプと三脚ボディが面接触となり、脚部の耐久性と接合部の剛性が格段に向上しました。
見た目的にも、60年前は脚パイプがアルミの地肌そのままの銀色(アルマイトの種類としては白と呼びます)だったものが、のちに黒アルマイト仕上げの脚部が登場し、1986年からはEVポストもブラックとなり黒い面積が拡大。1987年にはHUSKYの特徴だった赤いストラップも黒色となりメッキ部品以外は漆黒の三脚となりました。

雲台のネームプレートに「QUICK-SET」の文字があるモデルは、既に製造から少なくとも15年~古いと40年近くが経過しているので、どうしてもゴムや樹脂部品の経年劣化が目立つようになります。脚部ロックリングに巻かれている握りゴムが劣化して伸びてしまうとロック/アンロックの際にずれてしまって操作性に影響が出ますし、樹脂製の内部ロックリングが劣化して硬化してしまうと止まりが悪くなります。擬音で表現しますと「ギューッ」と力を入れて締めなければ固定できない脚は内部ロックリングが劣化していることが多く、「キュッ」と手首の返しだけで止まるのが正常な状態です。

また先ほど「EVポストが勢いよく落下する」と書きましたが、樹脂製のEVリングが上下2本装着されているモデルはきちんと調整されていれば落ちません。クランクギアを回してEVポストを上昇させ、ロックノブを締めなくても自重では落ちないのが正常な状態です。もちろん撮影時にはロックノブで固定しますが、ノブを緩めて上から雲台を押さえるか、クランクギアを逆方向に回して初めてEVは下降します。EVポストにはギアが刻まれているのでどうしても樹脂製のリング側が摩耗しやすいのですが、HUSKYはこんなもんだと思っている方が多い部分です。

もう一つ厄介なのが、各金属部品同士の潤滑に使われているグリースの劣化です。グリースは油なのでどうしても年数がたつと酸化変質してしまいますが、特にアメリカ製造時代のグリースはガムテープの糊残りのようにベタベタになってきます。こうなってくると既に潤滑性能はなくなり、摩耗によって発生した金属粉が混ざって硬化すると除去するのも大変なほど固着しているものも多く見られます。
オーバーホールの際は全ての部品をネジ1本単位まで分解して、長年蓄積された汚れとこのグリースを全て洗浄し、新しいグリースを塗布して組み立てる作業となります。どうしても手間が掛かるので3段一体型三脚のフルオーバーホールでは脚部・EV部・台板部・雲台部の合計で22,000円(税込)の工賃を頂いています。

100% Made in Japan(2008年モデル以降)

雲台ネームプレートが赤い三角マークでHUSKYとだけ記載されているものは(部品交換されていなければ)日本製造のモデルです。アルミ合金製のパイプは国内最高品質の専門工場で製作され、鋳物やネジ部品、ゴム部品、樹脂部品、ストラップなどそれぞれやはり国内の専門の加工会社で、それらを集めて組み立てるのももちろん国内工場でと、トヨ商事の小竹社長がとことんこだわって作り上げたネットワークで生産されています。
このモデルは脚部の伸縮はスムーズで開閉動作も節度があり、前述の通りEVの上下動作にもきちんと抵抗感があります。雲台部分も縦軸・横軸ともに適切なテンションが掛かり、パンニングはノブを緩めると完全にフリーとなり半締めでテンションが掛かった動きをさせられるように調整されています。

15年近く経過している個体もあるので所々劣化している部分も出てきますが、金属部品の摩耗は少ないものが多いと思います。この年式で金属パーツの摩耗があると、たいてい締め過ぎが原因です。先ほど書いた通りHUSKYはどの操作ノブも「キュッ」と締めれば十分な固定力があるように調整されています。必要以上の力で締めると金属同士が擦れて摩耗してきてしまい、グリース切れや汚れがあるとさらにそのスピードは速まります。逆に言えば力いっぱい締めないと固定できないHUSKYは整備が必要で、そのまま使用し続けると交換が必要となる部品が増えて高額修理となってしまいます。

ご使用の環境によっては石突ゴムの摩耗や雲台のコルクシートなどの劣化が始まる年式ですが、比較的多いのはパン棒の曲がりと破損です。HUSKYのヘッド一体型モデルは長・短2本のパン棒が雲台に装着されていますが、万が一倒れた時にパン棒が曲がることによって衝撃を吸収できるよう、あえてスチール製のシャフトが使用されています。たいていネジ部分との境目で曲がるので、そのまま使用すると真鍮製の固定ナットと平行に接触せずどんどん削ってしまい、ひどい場合は貫通してしまっているものもあります。またその曲がりを無理に力で戻すとシャフトに細かいクラックが入ってしまい、使用中に突然折れてしまうことも珍しくありません。曲がってしまったパン棒はなるべく早く新品交換するのがベストです。

もう一つ多いのがEVロックノブのネジ穴側の摩耗です。三脚ボディはアルミ合金製で、EVロックノブのシャフトはスチール製なのでやはり締め過ぎるとアルミ側のネジ穴が負けて摩耗してしまいます。またこのネジはネジ山の間隔が狭い、細かいネジを使っていますので取り外してからねじ込む際に斜めに挿入してしまうとアルミのネジ山を一気に削ってしまいます。修理の際はひとまわり太いドリルで傷ついたネジ山をいったん全て切削し、そこにステンレス製のネジ山だけの部品を新たに挿入して元通りのネジ山を再生します(ヘリサート修理)。やはり手間が掛かりますのでこの部分だけの修理でも4,400円(税込)の工賃が掛かってしまいます。

直せることに意味がある

当社では以前からHUSKYの限定的な修理は受けてきたのですが、フルオーバーホールも含めてすべての修理を1年あまり続けてきますと、本当にいろいろな方に愛されている三脚だなぁと思います。お爺様の代から続く写真館から当時モノのHUSKYが修理に入ってきたり、観光施設や結婚式場で酷使されてきた個体や新聞社など報道の第一線で活躍してきた個体、入学式から運動会・文化祭・修学旅行・卒業式まで生徒さんに寄り添ってきた個体、もちろん趣味で使われてきた三脚も含めて30年、40年物の個体も全く珍しくありません。

事実として、この間にお預かりしてきた200台以上のなかで修理不能と判断した三脚はなく、全ての三脚が修理可能でした。前述の通り修理金額とのバランスでお買い替えを選択されたお客様もいらっしゃいましたが、どう頑張っても修理できないHUSKYは1台たりともなかったのです。改めて60年にわたって部品の互換性を保ったままマイナーチェンジを続けてきた意味を実感しています。

もちろん使用環境も頻度も撮影スタイルも皆さん異なりますし、年式によってボルトの長さが違ったり交換部品の範囲が変わったり、既に何度か修理されてきた個体もありますので、実物をお預かりしてある程度分解しながらでないと正確な見積もりを出すことはできません。そのタイミングで既にお預かりしている三脚の台数が多い場合はどうしてもお見積りまでに2週間ほど掛かってしまうことがありますが、それだけ1台1台に真剣に向き合っていることの裏返しですので何卒ご容赦ください。修理内容が決まれば既にその三脚に取り掛かる準備ができている状態ですので、たいてい3~4日、混み合っていても1週間以内にはご返却できると思います。

平均的なフルオーバーホール総額の目安としては、工賃・部品代・消費税・送料の合計でヘッド一体型三脚では3万円前後~交換部品が多くても4万円を超える程度で収まっている方が多いように思います。もちろん同時に3段から4段へ、ヘッド一体型から分離型への組み換えなどの作業を行うことも可能です。部品代は別途掛かってしまいますが、オーバーホールと同時作業の場合は改めて組み換え工賃を頂くことはありません。

もう一つ「どのぐらいの間隔でオーバーホールをしたらいいのか」というご質問をよくいただきます。もちろん使用頻度がそれぞれ異なるので一概には言えませんが、新品部品はどうしても金属同士の接触部分から摩耗した金属粉が出やすく、グリースが黒く汚れるのはこれが原因です。金属粉が混入したグリースのまま使い続けたり増し締めをしたりすると研磨剤をつけながら動かしているような状態となり、どんどん摩耗が進んでしまいます。ちょっと前までは新車の初回点検時には必ずエンジンオイルの交換を案内されましたが同じ理由です。新品から1年~3年程度、各部が完全に馴染んだタイミングで1度オーバーホールをしてグリースを入れ替えると、その後10年の動きや持ちが変わってきます。このメンテナンスができていればあとは10年ごとを目安にしていただければいいと思います。具体的なお申し込み方法を最後に記しておきます。

HUSKYの修理・オーバーホールのお申込み手順

1.お申込み
ページ下にありますリンクより「修理・オーバーホール基本工賃」を商品としてお買い物かごに入れ、決済手続きをお取りください。
修理総額は1台1台異なりますので、便宜的にいったん3,000円の商品としてお申込みだけ頂き、のちほどご了承いただいた金額に変更させていただくという方法を取っております。
Webよりお手続きいただくことによりクレジットカード決済もご利用いただけますし、会員登録をしていただきますとささやかながらポイントも付与されます。またご都合のいいタイミングでスムーズな受付が可能です。

2.お預かり
修理品を本ページ末尾にあります住所までお送りいただくか直接お持ち込みください。不具合個所や気になっているところなどは、ご注文フォームの末尾にあります備考欄にお書きいただくか、お送りいただく際にメモを入れておいていただけると助かります。
お送りいただく際の運送会社はどこでも結構ですが、送料は元払いにてご負担いただきますようお願いいたします。
また加工の打ち合わせなどでどうしても事務所を留守にしてしまう時間帯がありますので、お持ち込みいただく場合は前日までにお電話またはメールにてご予約ください。

3.お見積
三脚をお預かり後、準備ができ次第お見積のご連絡をいたします。基本的にはWebにてご登録いただいたメールアドレスにPDFファイルを添付する形でお送りいたしますが、ご都合の悪い場合はその旨ご指定ください。
HUSKYはきちんと使えてこその三脚だと思っていますので、基本的には完全な状態でご使用頂くためのフルメニューでのお見積をご連絡いたします。そのなかで修理箇所を取捨選択していただくことも可能です。ご連絡を頂き次第、作業に入ります。

4.ご返却
作業完了後に決済金額を変更し、お申し込み時にご指定ただいた方法にてご返却いたします。
発送の場合は郵便局のゆうパックにて、送料は全国一律で880円(税込)のみ頂きます。

HUSKY画像 【スタジオJin】
修理・オーバーホール
基本工賃
HUSKYの修理やオーバーホールはこちらからお申し込みください
  修理工賃例(税込)
脚部オーバーホール基本工賃(3段) 8,800円
脚部オーバーホール基本工賃(4段) 11,000円
脚部オーバーホール基本工賃(5段) 13,200円
EV部オーバーホール基本工賃 3,300円
台板部オーバーホール基本工賃 3,300円
リコイルによるネジ穴再生加工 1ヶ所 4,400円
雲台部オーバーホール基本工賃 6,600円
カメラ止ネジのネジ山修正 1,100円
その他の修理・組み換え等 1ヶ所 3,300円~

(2023年9月)

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